「イーサリアムを送るだけで数千円取られた」「NFTを買おうとしたらガス代のほうが高かった」——イーサリアムを使い始めた方がまず戸惑うのが、この手数料の高さではないでしょうか。
ガス代は送る金額ではなく、処理にかかる計算量とネットワークの混雑度で決まります。つまり、同じ操作でもタイミングと経路の選び方次第で、支払う額は大きく変わります。
この記事では、まずEIP-1559以降のガス代の計算式を正確に押さえたうえで、実際に効果のある節約方法を順番に紹介します。仕組みを理解せずに設定だけいじると、取引が失敗してガス代だけ取られるという最悪のパターンに陥りやすいため、順番に読み進めてください。

ガス代の仕組みを正確に理解する
ガスとGwei
イーサリアムでは、処理の重さを「ガス」という単位で測ります。たとえばETHを単純に送るだけの取引は21,000ガス、スマートコントラクトを呼び出す取引はそれより多くのガスを消費します。
そのガス1単位あたりに支払う価格の単位がGwei(ギガウェイ)です。1 Gwei = 0.000000001 ETH(10億分の1 ETH)にあたります。ガス代の表示が「30 Gwei」となっていれば、ガス1単位につき30 Gweiを支払うという意味です。
EIP-1559以降の計算式
2021年8月のロンドンアップグレードで導入されたEIP-1559により、ガス代の決まり方は次の形になりました。
ガス代 =(ベースフィー + 優先手数料)× 消費ガス量
- ベースフィー(基本手数料):プロトコルが自動で決める部分。バリデーターには渡らず、バーン(焼却)される
- 優先手数料(チップ):バリデーターへのチップ。多く払うほど優先的に取り込まれやすい
ベースフィーは自動で上下する
ベースフィーは、直前のブロックのガス使用量をもとに調整されます。イーサリアムには「ブロックのガス上限の50%」という目標値が設定されており、直前のブロックがこの目標値を上回っていれば次のブロックのベースフィーは最大12.5%上昇し、下回っていれば最大12.5%下落する仕組みです。
この「最大12.5%ずつ」という設計が意味するのは、混雑が始まってから数ブロックのあいだにガス代が急上昇し得るということです。人気NFTの販売開始直後などに手数料が跳ね上がるのは、この仕組みによるものです。
Max Fee(上限)と余剰の返金
ウォレットの詳細設定には「Max Fee(maxFeePerGas)」と「Max Priority Fee」という2つの項目があります。Max Feeは支払ってもよい上限額で、実際のベースフィーがそれを下回った場合、差額は返金されます。
したがってMax Feeを高めに設定しても、必ずしもその額を支払うわけではありません。むしろ低く設定しすぎると、ベースフィーが上昇した際に取引が取り込まれず、いつまでも保留のままになります。

ガス代を節約する具体的な方法
1. レイヤー2ネットワークを使う
もっとも効果が大きいのがこれです。Arbitrum、Optimism、Base、zkSyncといったレイヤー2(L2)は、処理をメインネットの外で行い、結果をまとめてイーサリアムに書き込む仕組みです。
2024年3月のDencunアップグレード(EIP-4844)以降、L2がイーサリアムにデータを書き込むコストが下がり、L2上の手数料はメインネットと比べて大幅に低い水準になっています。単純な送金であれば、数円程度で済むケースも珍しくありません。
ただし、メインネットとL2のあいだで資金を移す「ブリッジ」には別途手数料と時間がかかります。少額を一度だけ動かす用途では、ブリッジ代のほうが高くつくこともあるため、使う頻度を踏まえて判断してください。
2. 混雑していないタイミングを選ぶ
ガストラッカーと呼ばれるサイトでは、現在のベースフィーと推奨される手数料水準がリアルタイムで公開されています。急がない取引であれば、混雑が落ち着いたタイミングまで待つだけで支払額を抑えられます。
大きなNFTの販売開始や、話題のプロジェクトのトークン配布があるときは、ネットワーク全体が混み合います。そうしたイベントと重ならない時間帯を選ぶだけでも効果があります。
3. 取引の回数そのものを減らす
ガス代は取引1件ごとに発生します。少額を何度も送るより、まとめて1回で送るほうが総額は安くなります。DeFiで複数の操作を行う場合も、一括で処理できる機能があればそちらを使うほうが有利です。
4. 不要なトークン承認(approve)を整理する
DEXを使うたびにトークンの承認取引が発生し、そのぶんガス代がかかります。同じトークンで繰り返し取引する場合、承認は初回のみで済むことが多いため、無駄な再承認をしていないか確認しましょう。
なお、使っていないコントラクトへの承認を残しておくことはセキュリティ上のリスクにもなります。定期的な見直しは、節約とリスク低減の両面で意味があります。
5. 優先手数料を状況に応じて調整する
急がない取引であれば、優先手数料を低めに設定することで支払額を抑えられます。ウォレットの「低・中・高」といったプリセットのうち、低速側を選ぶ形でも構いません。
ガスリミットは下げてはいけません。ガスリミットは「この取引に使ってよいガスの上限」であり、手数料の単価ではありません。処理に必要な量を下回る値に設定すると、取引は途中で失敗します。そして失敗した取引でも、そこまでに消費したガス代は返ってきません。節約のつもりでガスリミットを削るのは、最も避けるべき操作です。
6. 取引所の送金機能を使う
取引所から別の取引所やウォレットへ送る場合、取引所が定める出金手数料が適用されます。ネットワークが混雑している時期は、この固定手数料のほうが自分でメインネット送金するより安く済むことがあります。対応ネットワークにL2が含まれている取引所であれば、そちらを選ぶ選択肢もあります。
ガス代を比較するときの視点
| 方法 | 節約効果 | 手間 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| レイヤー2の利用 | 大きい | ブリッジ操作が必要 | 継続的に取引する場合 |
| タイミングをずらす | 中程度 | ほぼ不要 | 急がない送金・操作 |
| 取引をまとめる | 中程度 | 計画が必要 | 複数回の送金予定がある場合 |
| 優先手数料の調整 | 小〜中 | 設定変更のみ | 時間に余裕があるとき |
| 承認の整理 | 小 | 定期的な確認 | DeFiを頻繁に使う場合 |
効果と手間のバランスで考えると、頻繁に使う方はレイヤー2への移行、たまにしか使わない方はタイミング調整が現実的な選択になります。

よくある質問(Q&Aコーナー)
Q. ガス代は日本円でいくらくらいですか?
A. ETHの価格とベースフィーの両方で変わるため、一律の金額は示せません。ガストラッカーで現在のGwei水準を確認し、そこにETHの円建て価格を掛けて計算する必要があります。混雑度によって数十倍の差が出ることもあります。
Q. ガス代はETHでしか支払えませんか?
A. イーサリアムのメインネットではETHが必要です。トークンだけを保有していてETHがない状態では取引を実行できないため、少量のETHを常に残しておく運用が基本になります。L2でもそのネットワークが指定する通貨が必要です。
Q. 取引が保留のまま進みません。どうすればいいですか?
A. 多くのウォレットには、同じnonce(連番)でより高い手数料の取引を送り直す「高速化」やキャンセルの機能があります。設定した手数料がベースフィーを下回っている場合は、この方法で上書きするのが一般的な対処です。
Q. 取引が失敗してもガス代はかかりますか?
A. かかります。ネットワークは処理を実行した分の計算資源を消費しているため、失敗しても消費されたガス代は戻りません。スリッページ設定やガスリミットの不足が原因になりやすいため、実行前に確認してください。
Q. ベースフィーがバーンされると、ETHは減っていくのですか?
A. バーンされた分は供給から取り除かれます。一方で新規発行もあるため、供給が増えるか減るかはネットワークの利用状況によって変動します。将来の供給量や価格を断定することはできません。
Q. レイヤー2に移した資産はいつでも戻せますか?
A. メインネットへの出金は可能ですが、方式によって所要時間が異なります。Optimistic Rollup系は異議申し立て期間があるため出金に時間がかかり、ZK Rollup系は比較的短時間で済む傾向があります。急いで戻す必要がある資金は、この点を踏まえて配置してください。
Q. ガス代の安いチェーンに移れば解決しますか?
A. 手数料だけを基準に選ぶのは危険です。チェーンごとに利用できるサービスやセキュリティの前提が異なり、資産をブリッジする過程にもリスクがあります。手数料、対応サービス、実績を総合して判断してください。
まとめ:仕組みを知れば、削れる場所ははっきりする
- ガス代=(ベースフィー+優先手数料)×消費ガス量。単位はGwei
- ベースフィーはブロック使用率に応じて最大12.5%ずつ自動で増減する
- Max Feeを高めに設定しても、余剰分は返金される
- 効果が最も大きい節約策はレイヤー2の活用
- ガスリミットを下げるのは節約ではなく、取引失敗のリスクを増やすだけ
イーサリアムのガス代は、避けようのない固定費ではありません。ベースフィーが混雑度で動くこと、優先手数料が自分で調整できること、そしてレイヤー2という選択肢があること。この3点を押さえておけば、支払う額はかなりコントロールできるようになります。
まずはガストラッカーをブックマークして、いま自分が高い時間帯に操作しようとしていないかを確認するところから始めてみてください。暗号資産の取引は価格変動リスクを伴い、元本は保証されません。取引は余剰資金の範囲で行い、各ネットワークやサービスの仕様は公式サイトで最新の情報をご確認のうえ、自己責任でご判断ください。
参考:Ethereum.org ガスと手数料|Etherscan ガストラッカー|金融庁 暗号資産の利用者のみなさまへ

※記事執筆時点の情報です。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。暗号資産の取引は価格変動リスクを伴い、元本は保証されません。


