「自分でもNFTを作って売ってみたい」と考えたとき、最初につまずくのが「そもそも何から手をつければいいのか分からない」という点ではないでしょうか。ウォレット、ガス代、マーケットプレイス、チェーン選び。聞き慣れない言葉が並ぶだけで、手が止まってしまう方も多いはずです。
NFTを作って売る流れ自体は、実はそれほど複雑ではありません。必要なものを順番にそろえて、手順どおりに進めれば、初日でも出品まで到達できます。難しいのは技術ではなく、費用の見積もりと「売れるかどうか」という現実の部分です。
この記事では、NFTを作って売るために必要な準備、実際の作成手順、出品の流れ、かかる費用、そして見落とされがちな税金や詐欺のリスクまでを、順を追って整理していきます。作る前に知っておいたほうがいい話も正直に書いていますので、判断材料として使ってみてください。

NFTを作って売るまでの全体像
まずは全体の流れをつかんでおきましょう。細かい操作はあとから覚えればよく、順番さえ頭に入っていれば迷いません。
| ステップ | やること | 目安の時間 |
|---|---|---|
| 1 | 国内の暗号資産取引所で口座を開設する | 申込み15分+審査で数時間〜数日 |
| 2 | ウォレット(メタマスクなど)を作成する | 10分程度 |
| 3 | 取引所からウォレットへ暗号資産を送金する | 10〜30分程度 |
| 4 | 作品データを用意する(画像・音声・動画など) | 制作次第 |
| 5 | マーケットプレイスでコレクションを作りミントする | 20分程度 |
| 6 | 価格と販売形式を決めて出品する | 10分程度 |
ここで押さえておきたいのが、「作る(ミント)」と「売る(出品)」は別の作業だという点です。ミントはブロックチェーン上にデータを登録する行為、出品はそれを販売リストに載せる行為で、費用が発生するタイミングも異なります。
NFTを作る前に必要な3つの準備
1. 国内の暗号資産取引所の口座
NFTの売買には暗号資産が必要になるため、まずは日本円で暗号資産を購入できる場所を確保します。日本国内では、金融庁への暗号資産交換業者としての登録を受けた事業者だけが営業できる仕組みになっており、記事執筆時点で登録業者は数十社が公表されています。
登録業者かどうかは金融庁の公表リストで確認できます。SNS広告や知人からの紹介で見つけた海外業者は、日本での登録がないケースがあり、トラブルが起きても救済を受けにくくなります。口座開設は本人確認書類とスマートフォンがあればオンラインで完結する事業者が大半です。
2. ウォレット(メタマスクなど)
ウォレットは、暗号資産やNFTを自分で保管するための財布にあたるツールです。ブラウザの拡張機能やスマートフォンアプリとして提供されており、MetaMask(メタマスク)が広く使われています。
作成時に表示される12個の英単語(リカバリーフレーズ/シードフレーズ)は、ウォレットを復元するための鍵そのものです。リカバリーフレーズを他人に伝えたり、Webサイトに入力したりすると資産を丸ごと失います。紙に書いて物理的に保管し、スクリーンショットやクラウドメモには残さないのが基本です。
- ウォレットのインストールは必ず公式サイトから行う。検索結果の広告枠には偽サイトが紛れ込むことがあります
- 「サポート」を名乗るアカウントからDMでリカバリーフレーズを聞かれたら、それは例外なく詐欺です
- 記事執筆時点では、生成AIを使った精巧なフィッシングサイトが増えているとされ、URLの目視確認だけでは見抜きにくくなっています
3. 作品データ
NFTにできるのは画像だけではありません。音声、動画、3Dモデル、テキストなど、マーケットプレイスが対応している形式であれば登録できます。一般的にはPNG・JPG・GIF・MP4などが使われ、ファイルサイズには上限が設けられています。
ここで重要なのが権利関係です。他人のイラストや写真、生成物をそのまま登録すると、著作権侵害としてコレクションが削除されるだけでなく、法的な責任を問われる可能性もあります。自分に権利がある作品を使いましょう。

NFTの作り方(ミントの手順)
ステップ1:チェーンを選ぶ
どのブロックチェーン上でNFTを発行するかを決めます。イーサリアムは実績と流動性で優位ですが、その分ネットワーク手数料(ガス代)が高くなりがちです。手数料を抑えたい場合は、Polygonなどの低コストなチェーンや、イーサリアムのレイヤー2が選択肢になります。
なお、Polygonのネイティブトークンは以前のMATICからPOLへ移行が進んでおり、記事執筆時点ではPolygon上のガス代はPOLで支払う形になっています。古い解説記事のままMATICを買い足そうとすると混乱するため、購入前に対応状況を確認してください。
ステップ2:マーケットプレイスにウォレットを接続する
OpenSeaなどのマーケットプレイスにアクセスし、ウォレットを接続します。接続時に署名を求められますが、この署名自体には基本的に費用はかかりません。ただし、身に覚えのない署名要求は絶対に承認しないことが鉄則です。
ステップ3:コレクションを作成する
コレクションは作品をまとめる「棚」のようなものです。コレクション名、説明文、ロゴ画像、対応チェーン、二次流通時のクリエイター報酬(ロイヤリティ)の割合などを設定します。ロイヤリティは転売されるたびに作者へ還元される仕組みですが、マーケットプレイスによって扱いが異なり、必ず支払われるとは限りません。
ステップ4:作品をアップロードして情報を入力する
作品ファイルをアップロードし、タイトル、説明、外部リンク、プロパティ(属性)などを入力します。説明文は購入検討者にとって数少ない手がかりになる情報なので、作品のコンセプトや制作背景を丁寧に書いておくと印象が変わります。
ステップ5:ミントする
入力内容を確定すると、ブロックチェーンへの登録処理が行われます。ここで発生するのがガス代です。チェーンや混雑状況によって金額が変動し、同じ操作でもタイミングによって数十円になることもあれば数千円になることもあります。
NFTの売り方(出品の手順)
ミントが完了したら、いよいよ販売です。販売形式は主に2種類あります。
| 販売形式 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 固定価格(Fixed Price) | あらかじめ決めた価格で販売する。買い手はその価格で即購入できる | 相場が読みづらい初出品、早めに売り切りたいとき |
| オークション | 期限を決めて入札を受け付け、いちばん高い金額を提示した入札者に売却する | すでに注目が集まっている作品、需要が読めるとき |
価格設定で迷ったら、同じジャンル・同じ規模のコレクションが実際にいくらで取引されているかを確認するのが現実的です。マーケットプレイス上では過去の取引履歴が公開されているため、希望価格ではなく成約価格を見るようにしてください。
出品には有効期限を設定できます。期限が切れると自動的にリストから外れるため、売れ残っている場合は価格を見直して再出品する流れになります。
NFTの作成・販売にかかる費用
費用は大きく分けて3種類です。金額はチェーンの混雑状況や相場で日々変わるため、ここでは項目の整理にとどめます。
- ガス代(ネットワーク手数料):ミント時、出品の初回設定時、売買成立時などに発生します。イーサリアムは高め、Polygonやレイヤー2は低めになる傾向があります
- マーケットプレイスの販売手数料:売れたときにプラットフォーム側へ支払う手数料です。サービスごとに料率が異なるため、出品前に公式の手数料ページで確認してください
- クリエイターロイヤリティ:自分が受け取る側になりますが、他人の作品を転売する場合は支払う側になります
見落としやすいのが「売れなくてもガス代は返ってこない」という点です。ミント時に支払った手数料は、作品が売れなかった場合でも戻りません。まとめて大量にミントすると、その分だけ確定した支出が積み上がります。
費用を抑えたい場合は、購入されたタイミングで初めてブロックチェーンに登録される「レイジーミント」に対応したマーケットプレイスを選ぶ方法もあります。ただし対応状況はサービスによって変わるため、その時点の仕様を確認してから使ってください。

知っておきたい「売れないケースが大半」という現実
ここは正直に書きます。NFTを出品したからといって、自動的に買い手がつくわけではありません。
NFT市場は2021年から2022年にかけて大きく盛り上がりましたが、その後は取引量が大幅に縮小しました。複数の市場調査では、ピーク時と比べて取引量が大きく落ち込んだ状態が続いていると報告されています。出品数に対して買い手の数が限られているため、無名のクリエイターの作品が何もせずに売れる状況ではありません。
「NFTを作れば稼げる」という前提で始めると、ガス代と手数料だけが残る結果になりかねません。売上の見込みではなく、失っても困らない金額の範囲で始めることをおすすめします。
一方で、市場が消えたわけでもありません。投機的な取引は落ち着いた反面、会員証やチケット、ゲーム内アイテム、証明書といった実用的な用途での活用は続いています。作品を売ることだけを目的にせず、コミュニティづくりや実用的な使い道とセットで考えるほうが、現在の市場には合っています。

NFTの売買と税金
NFTの取引で利益が出た場合、日本では課税対象になります。国税庁は「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」を公表しており、そこで基本的な考え方が示されています。
おおまかには、自分が制作したNFTを最初に販売した場合(一次流通)の所得は雑所得または事業所得として扱われ、他人から購入したNFTを転売した場合(二次流通)は譲渡所得として扱われるのが原則とされています。ただし、営利目的で継続的に売買している場合など、状況によって区分が変わります。
- 暗号資産で受け取った売上は、受け取った時点の時価で評価する必要があります
- 暗号資産同士の交換でも損益が発生することがあり、日本円に換えていなくても計算対象になる場合があります
- 取引履歴は後から復元しにくいため、記録はその都度残しておくのが安全です
- 判断に迷う部分は、国税庁の公表資料を確認するか、税理士に相談してください
詐欺・トラブルを避けるための心得
NFTの領域は、残念ながら詐欺の手口も多く報告されています。以下は最低限押さえておきたいポイントです。
- マーケットプレイスの公式URLはブックマークから開く。検索経由は偽サイトに当たるリスクがあります
- ウォレットに身に覚えのないNFTが送られてきても、リンクを踏んだり操作したりしない
- 取引が終わったら、トークンの使用許可(Approve)を取り消しておく
- 大きな金額を扱うウォレットと、日常的に使うウォレットを分ける
- 「必ず値上がりする」といった勧誘は、根拠のない話として距離を置く

よくある質問(Q&Aコーナー)
Q. NFTを作るのに、いくらぐらい用意すればいいですか?
A. チェーンによって大きく変わります。イーサリアム上でミントする場合はガス代が高くなりやすいため、余裕を持った金額を用意しておくと安心です。Polygonなどの低コストなチェーンであれば、数千円程度から一通り試せることもあります。いずれにしても金額は日々変動するので、実行前に画面上の見積もりを必ず確認してください。
Q. プログラミングの知識は必要ですか?
A. 一般的なマーケットプレイスを使う限り、コードを書く必要はありません。画面の指示に従って入力していけば作成できます。独自の機能を持つコレクションを作る場合はスマートコントラクトの知識が必要になりますが、最初の一歩には不要です。
Q. スマートフォンだけでもNFTは作れますか?
A. マーケットプレイスによってはスマートフォンのアプリやブラウザから作成できます。ただし、細かい設定はパソコンのほうが操作しやすい傾向があります。ウォレットの接続まわりでつまずきやすいため、可能であればパソコンでの作業をおすすめします。
Q. 作ったNFTは後から削除できますか?
A. ブロックチェーン上に記録されたデータそのものを消すことは基本的にできません。マーケットプレイス上の表示を非表示にしたり、出品を取り下げたりすることは可能ですが、記録は残ります。この点も含めて、公開してよい内容かを事前に確認してください。
Q. どのチェーンを選ぶか迷っています。
A. 流動性を重視するならイーサリアム、コストを重視するならPolygonやレイヤー2という整理になります。まず低コストのチェーンで一通り体験して、手応えがあればイーサリアムに広げるという進め方が現実的です。なお、チェーンごとに買い手の層も異なります。
Q. 海外のマーケットプレイスを使っても問題ありませんか?
A. 利用自体を禁じるルールがあるわけではありませんが、日本語サポートがない、トラブル時の対応が期待しにくい、といった制約があります。また、日本国内の登録を受けていない事業者との取引はリスクが高い点に留意してください。金融庁も無登録業者との取引について注意を呼びかけています。
Q. 売れなかった作品はどうすればいいですか?
A. 価格を見直して再出品する、説明文や作品名を改善する、コレクション全体の方向性を整理する、といった対応が考えられます。ただし、再出品のたびに手数料が発生する場合があるため、闇雲に繰り返すのではなく、売れない理由を検討してから動くほうが結果的にコストを抑えられます。
まとめ
- 必要なのは「取引所の口座」「ウォレット」「作品データ」の3つ
- 作る(ミント)と売る(出品)は別の作業で、費用の発生タイミングも異なる
- チェーン選びでコストが大きく変わる。PolygonのトークンはMATICからPOLへ移行が進んでいる
- 売れなくてもガス代は戻らないため、最初は1点から試すのが安全
- NFT市場はピーク時から大きく縮小しており、出品すれば売れる状況ではない
- 利益が出れば課税対象。国税庁のFAQを確認し、取引履歴は都度記録する
- リカバリーフレーズの管理と偽サイト対策は最優先
NFTを作って売る流れは、手順さえ分かればそれほど難しくありません。ただし、収益を目的にするなら市場の現状を踏まえた冷静な判断が欠かせません。まずは少額で1点だけ作り、ミントから出品までを実際に通してみるところから始めてみてください。
マーケットプレイスの仕様や手数料はOpenSea公式サイトで確認できます。ウォレットの導入はMetaMask公式サイトから、NFTの税務上の取扱いは国税庁の公表資料をご確認ください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資その他の勧誘を目的とするものではありません。暗号資産・NFTの取引は価格変動リスクを伴い、投資判断はご自身の責任で行ってください。余剰資金の範囲でご利用いただき、料金・仕様・制度などの最新情報は各公式サイトおよび金融庁・国税庁の公表資料で必ずご確認ください。記事執筆時点の情報です。


