「NFTアートで収入を得られるらしい」という話を目にして、実際どうなのだろうと調べ始めた方は多いのではないでしょうか。一方で、「もう終わった」「バブルだった」という声も同じくらい見かけるはずです。どちらが本当なのか、判断に困るところだと思います。
結論から言えば、NFTアートで収益を得る手段は存在しますが、出品すれば売れるという市場ではありません。作品を並べるだけで買い手がつく時期は、すでに過ぎています。それでも収益を上げている作り手がいるのも事実です。
この記事では、NFTアートの収益がどこから生まれるのか、実際にどのくらいの人が売れているのか、費用倒れになる仕組み、税金の扱い、そして詐欺に巻き込まれないための注意点までを整理します。期待をあおる書き方はしません。判断材料としてお使いください。

NFTアートの収益はどこから生まれるのか
まず、お金がどこから入ってくるのかを整理しておきましょう。収益の入り口は主に4つです。
| 収益の種類 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一次販売 | 自分が作った作品を初めて販売したときの売上 | もっとも基本的な収入。買い手がつくかどうかがすべて |
| ロイヤリティ(二次流通報酬) | 購入者が転売したときに、設定した割合が作者へ還元される | 継続的な収入になりうるが、支払いが任意のマーケットもある |
| 受注制作 | 個人や企業からの依頼を受けて作品を制作する | 作品そのものより実績と信頼が問われる |
| コラボ・企業案件 | ブランドやプロジェクトと組んでコレクションを展開する | 知名度が前提になりやすい |
この中で見落とされがちなのがロイヤリティです。かつては「一度作れば転売のたびに報酬が入る」という点が大きな魅力として語られていました。しかし現在は、ロイヤリティの支払いを任意にしているマーケットプレイスも存在します。設定した割合が必ず支払われるとは限らない、という前提で考えておくのが安全です。
市場の現状を数字で確認する
期待値を正しく持つために、市場の状況を確認しておきましょう。
NFT市場は2021年から2022年にかけて急拡大しましたが、その後は大きく縮小しました。複数の市場レポートでは、ピーク時と比較して取引量が大幅に減少した状態が続いていると報告されています。世界的に広く利用されているマーケットプレイスであるOpenSeaの取引高も、最盛期からは大きく落ち込んだと報じられています。
一方で、市場そのものが消滅したわけではありません。市場調査各社の推計では、NFT関連市場は数十億ドル規模で推移しており、日本国内にも一定の市場が存在するとされています。投機色が薄れた代わりに、会員証、イベントチケット、ゲーム内アイテム、証明書といった実用的な用途での利用が広がっています。
- 出品数に対して買い手の数は限られており、無名の作品が自動的に売れる状況ではありません
- 「短期間で大きく稼げた」という事例は、市場が過熱していた時期の話であることが多いです
- 販売実績のない状態からの立ち上げには、相応の時間と発信の手間がかかります
- 収益を保証する仕組みはどこにも存在しません

費用倒れになる仕組みを理解しておく
NFTアートで赤字になる人が多い理由は、コスト構造にあります。
ガス代は売れなくても戻らない
作品をブロックチェーンに登録する(ミントする)際には、ネットワーク手数料であるガス代が発生します。この費用は作品が売れなかった場合でも返金されません。100点まとめてミントすれば、その分だけ確定した支出になります。
イーサリアム上でのミントはガス代が高くなりやすく、混雑時には1点あたりの負担が無視できない金額になることもあります。Polygonやイーサリアムのレイヤー2を選べばコストは大きく下がりますが、その分だけ買い手の層も変わります。
販売手数料とロイヤリティが差し引かれる
作品が売れた場合、マーケットプレイスの販売手数料が差し引かれます。料率はサービスによって異なるため、出品前に公式の手数料ページで確認してください。表示価格がそのまま手取りになるわけではない、という点は最初に押さえておきたいところです。
制作時間というコストがある
見えにくいコストが制作時間です。1点あたり数時間かけた作品が数百円で売れた場合、時給換算では厳しい結果になります。趣味の延長として楽しむのか、収益事業として取り組むのかによって、判断基準は変わってきます。
- ミント費用 + 出品時の手数料 = 売れなくても確定する支出
- 販売価格 - 販売手数料 - ロイヤリティ負担 = 実際の手取り
- 制作時間 × 自分の時給感覚 = 見えないコスト
- この3つを出したうえで、「いくらまでなら試してよいか」を先に決めておく
収益につながりやすい取り組み方
実際に販売実績を積んでいる作り手には、いくつかの共通点があります。技術論ではなく、進め方の話として整理します。
1. 単発の絵ではなく「シリーズ」で考える
1点だけの作品より、統一されたコンセプトを持つシリーズのほうが認知されやすい傾向があります。世界観や設定を持たせることで、購入者にとって「集める理由」が生まれるためです。
2. 発信を制作とセットで行う
NFTアートは、マーケットプレイスに置いておくだけでは見つけてもらえません。SNSやコミュニティでの発信が、実質的な集客手段になっています。制作過程やコンセプトの共有、他の作り手との交流など、地道な積み重ねが結果に影響します。
3. 実用性のある使い道を組み込む
作品を持っていることで得られる体験や特典を設計する手法もあります。限定コンテンツへのアクセス、イベント参加権、コミュニティ内での役割など、保有する理由を作品の外側に用意する考え方です。投機に頼らない需要をつくるアプローチとして注目されています。
4. 低コストのチェーンから始める
初期段階では、ガス代の安いチェーンで試行錯誤するほうがリスクを抑えられます。手応えを得てから、流動性の高いチェーンに展開するという順番です。なお、Polygonのネイティブトークンは以前のMATICからPOLへの移行が進んでおり、記事執筆時点ではガス代の支払いはPOLで行う形になっています。


NFTアートの収益と税金
収益が出た場合、日本では課税対象になります。国税庁は「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」を公表しており、そこで基本的な考え方が示されています。
自分が制作した作品を最初に販売した場合(一次流通)の所得は、原則として雑所得または事業所得として扱われます。他人から購入した作品を転売した場合(二次流通)は譲渡所得として扱われるのが原則ですが、継続的・営利的に売買している場合は区分が変わることがあります。
また、売上を暗号資産で受け取った場合は、受け取った時点の時価で評価する必要があります。日本円に換金していなくても計算対象になる場面があるため、その都度記録を残しておくことが重要です。
- 暗号資産で受け取った売上は、受領時の時価で評価する
- 暗号資産同士の交換でも損益が発生する場合がある
- ガス代や制作にかかった費用が経費として扱えるかは、所得区分や状況によって異なる
- 判断に迷う部分は国税庁の公表資料を確認し、必要に応じて税理士へ相談する
詐欺・トラブルへの備え
NFT領域では詐欺の手口も多く報告されています。作り手側も標的になるため、以下は最低限押さえておきたいところです。
- リカバリーフレーズは誰にも教えない。入力を求めるサイトは例外なく偽物です
- 「コラボしたい」というDMから偽サイトへ誘導する手口が報告されています。リンクは安易に踏まない
- 大きな資産を置くウォレットと、実験用のウォレットを分ける
- 取引が終わったらトークンの使用許可(Approve)を取り消す
- 日本国内で登録を受けていない事業者との取引はリスクが高く、金融庁も注意を呼びかけています
また、自分の作品が無断でNFT化されるケースもあります。定期的に自分の作品名やアカウント名で検索し、心当たりのない出品がないか確認しておくと、早い段階で気づけます。

よくある質問(Q&Aコーナー)
Q. 絵が描けなくてもNFTアートで収益を得られますか?
A. 写真、3Dモデル、音声、生成系のツールを使った作品など、絵以外の表現でもNFTにできます。ただし、どの手段でも「なぜその作品が選ばれるのか」という理由が必要になる点は変わりません。ツールで量産するだけでは差別化が難しいのが現状です。
Q. どのくらいの期間で収益が出ますか?
A. 個人差が非常に大きく、期間を示すことはできません。初出品ですぐ売れる方もいれば、1年以上動きがない方もいます。収益が出る時期を前提に資金計画を立てるのは避け、失っても困らない範囲で取り組むことをおすすめします。
Q. ロイヤリティはきちんと受け取れますか?
A. マーケットプレイスによって扱いが異なります。ロイヤリティの支払いを任意としているサービスもあり、設定した割合が必ず支払われるとは限りません。収益の柱としてロイヤリティを前提にするのは避けたほうが無難です。
Q. 生成AIで作った作品を出品してもいいですか?
A. マーケットプレイス側の規約と、使用したツールの利用規約の両方を確認する必要があります。また、学習元や生成結果によっては権利上の問題が生じる可能性もあります。表示ルールを設けているサービスもあるため、事前に確認してください。
Q. 日本国内のマーケットプレイスと海外のもの、どちらがいいですか?
A. 日本語サポートや円建てでの決済を重視するなら国内のサービス、買い手の母数を重視するなら海外の大手という整理になります。ただし、国内サービスは対応チェーンや機能が限られる場合があります。目的に応じて使い分けるのが現実的です。
Q. 赤字になった場合、他の所得と相殺できますか?
A. 所得区分によって扱いが異なり、一律には言えません。雑所得として扱われる場合は他の所得区分との損益通算ができないなど制約があります。具体的な取扱いは国税庁の公表資料を確認するか、税理士に相談してください。
Q. NFTアートはもう終わったという意見をどう受け止めればいいですか?
A. 投機的な高額取引が中心だった時期と比べれば、市場は大きく変化しています。その意味で「かつてのような相場は終わった」という指摘は事実に近いと言えます。一方で、実用的な用途での活用は続いており、活動の場としてはなくなっていません。何を目的にするかで評価が変わる、というのが実際のところです。
まとめ
- 収益の入り口は一次販売・ロイヤリティ・受注制作・コラボの4つ
- ロイヤリティは支払いが任意のマーケットもあり、収益の柱にしにくい
- 市場はピーク時から大きく縮小しており、出せば売れる状況ではない
- ガス代は売れなくても戻らないため、まとめてミントするほど赤字リスクが上がる
- 販売実績を積んでいる人は、制作と同じくらい発信に時間をかけている
- 収益が出れば課税対象。国税庁のFAQを確認し、記録はその都度残す
- リカバリーフレーズの管理とウォレットの使い分けが自衛の基本
NFTアートは、短期間で大きな収益を狙う手段としては現実的ではありません。ただし、作品を届ける手段のひとつとして、また実用的な用途と組み合わせる土台としては、依然として使い道があります。まずは低コストのチェーンで1点だけ試し、反応を見ながら判断していくのが堅実な進め方です。
マーケットプレイスの仕様はOpenSea公式サイト、税務上の取扱いは国税庁、無登録業者に関する注意喚起は金融庁の公表情報をご確認ください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資その他の勧誘を目的とするものではありません。暗号資産・NFTの取引は価格変動リスクを伴い、収益を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行い、余剰資金の範囲でご利用ください。料金・仕様・制度などの最新情報は各公式サイトおよび金融庁・国税庁の公表資料で必ずご確認ください。記事執筆時点の情報です。


