イーサリアムのガス代の高さに悩んだことがある方なら、「レイヤー2」という言葉を目にしたことがあるはずです。ただ、Arbitrum、Optimism、Base、zkSync、Polygonと名前が並ぶと、それぞれが何をしているのか、どう違うのかが分かりにくいのではないでしょうか。
レイヤー2は「どれが優れているか」ではなく、設計思想が異なる別々のアプローチです。処理方式、トークンの有無、得意な用途がそれぞれ違うため、比べるべきは価格ではなく仕組みと使われ方です。
この記事では、レイヤー2の基本的な仕組みを整理したうえで、主要なネットワークとそのトークンの特徴、それぞれが抱える課題を解説します。値上がりを予想する記事ではありません。技術と現状を理解するための材料としてお読みください。

レイヤー2とは何をしている仕組みか
レイヤー2は、イーサリアム本体(レイヤー1)の外側で取引を処理し、その結果だけをまとめてイーサリアムに記録する仕組みです。処理の大部分を外に出すことで、手数料を抑えつつ処理速度を上げられます。
イーサリアムは分散性と安全性を重視した設計になっているため、処理能力に限りがあります。混雑すればガス代が高騰し、少額の取引が成り立たなくなります。この課題を、イーサリアム本体を変えずに解決しようとするのがレイヤー2のアプローチです。
2つの主要な方式
| 方式 | 考え方 | 特徴 |
|---|---|---|
| オプティミスティック・ロールアップ | 取引は正しいと仮定して処理し、異議申し立ての期間を設ける | イーサリアム互換性が高く開発しやすい。引き出しに待機期間がある |
| ZKロールアップ | 暗号学的な証明で正しさを検証してから記録する | 引き出しが速い。技術的な難易度が高い |
記事執筆時点では、オプティミスティック方式のネットワークが預かり資産の大半を占めているとされています。複数の集計では、DeFiの資産の8割前後がオプティミスティック系のレイヤー2に集中していると報告されています。技術的にはZK方式のほうが優れているという評価もありますが、実際の採用状況とは必ずしも一致していません。
主要なレイヤー2とそのトークン
Arbitrum(アービトラム/ARB)
Arbitrumは、オプティミスティック・ロールアップを採用したネットワークで、レイヤー2の中でもっとも預かり資産が大きい部類に入ります。L2BEATの集計では、記事執筆時点でBaseと首位を争う位置にあり、この2つでロールアップ全体の8割前後の資産を占める状況が続いています。順位は入れ替わりうるため、最新の数値は上記の集計サイトでご確認ください。
特徴は、DeFiとゲーム分野での採用の広さです。Stylusという仕組みによってRustやC++で書かれたスマートコントラクトにも対応しており、開発者の選択肢が広い点も挙げられます。
ARBトークンはガバナンストークンとして位置づけられており、ネットワークの意思決定への参加に使われます。ガス代の支払いにはETHが使われる点は押さえておきましょう。
Base(ベース)
Baseは、暗号資産取引所のCoinbaseが運営に関わるレイヤー2です。Optimismの技術基盤(OP Stack)を採用しており、預かり資産の規模はレイヤー2の中で最上位クラスまで伸びています。記事執筆時点ではArbitrumと首位を争う水準にあります。
注目すべき点は、記事執筆時点でBaseには独自トークンが存在しないことです。トークンによるインセンティブなしでここまで利用者を集めており、この点で他のレイヤー2とは方針が異なります。
ただし、2025年9月にBaseの開発を主導するJesse Pollak氏が「ネットワークトークンの検討を始めた」と表明しており、以降も具体的な設計・時期は公表されていません。「検討中」と「発行済み」はまったく別の話です。Baseのトークンを名乗るものが取引されていても、それは公式のものではありません。SNSやDMで購入を勧められた場合は、詐欺を強く疑ってください。
Optimism(オプティミズム/OP)
Optimismは、オプティミスティック・ロールアップの代表的な存在のひとつです。単独のネットワークとしてだけでなく、同じ技術基盤を共有する複数のチェーンを束ねる「Superchain」という構想を進めています。BaseもこのOP Stackを採用したチェーンのひとつです。
OPトークンはガバナンストークンで、公共財への資金配分を決める仕組みなど、独自のガバナンス運営に使われています。
zkSync(ゼットケーシンク/ZK)
zkSyncは、ZKロールアップを採用したネットワークの中で規模の大きい部類に入ります。アカウント抽象化(Account Abstraction)をネイティブに備えており、ウォレットの使い勝手を改善する方向性を持っています。
ただし、預かり資産の規模はArbitrumやBaseと比べると大きく見劣りします。ZK方式ではLineaやScrollも稼働していますが、いずれもオプティミスティック系との差は開いた状態です。技術的な先進性が、そのまま採用につながっているわけではない点は理解しておく必要があります。具体的な数値は変動するため、L2BEATなどの集計サイトで最新の状況をご確認ください。
Polygon(ポリゴン/POL)
Polygonは、当初はイーサリアムのサイドチェーンとして始まり、現在は複数のチェーンをつなぐ構想へと展開しています。ネイティブトークンは以前のMATICからPOLへの移行がほぼ完了しており、記事執筆時点では99%以上が移行済みとされています。
Polygon PoS上のガス代は、2024年9月以降POLで支払う形になっています。古い解説記事を参考にしてMATICを購入しようとすると混乱するため、この点は必ず確認してください。詳細は後述します。

レイヤー2のトークンをどう理解すればいいか
ここは誤解が生まれやすい部分なので、丁寧に整理します。
トークンの役割はネットワークごとに違う
| ネットワーク | トークン | 主な役割 |
|---|---|---|
| Arbitrum | ARB | ガバナンス(ガス代はETH) |
| Optimism | OP | ガバナンス、資金配分の決定(ガス代はETH) |
| Base | なし | 独自トークンを発行していない |
| zkSync | ZK | ガバナンス |
| Polygon PoS | POL | ガス代の支払い、ステーキング、ガバナンス |
この表から分かるとおり、多くのレイヤー2ではガス代の支払いにETHが使われ、独自トークンはガバナンス用途に限られています。ネットワークが使われることと、トークンの需要が増えることは、必ずしも直結しません。
ネットワークの利用状況とトークンは別の話
レイヤー2の預かり資産が増えても、ガバナンストークンに直接的な需要が生まれるとは限りません。Baseのように、トークンを持たないまま大きな規模に成長したネットワークがあることが、その証拠と言えます。
トークンを検討する場合は、そのトークンがネットワーク内でどのような役割を持ち、どこから需要が生まれるのかを確認することが重要です。
- 暗号資産の価格は大きく変動し、短期間で取得価額を大幅に下回ることがあります
- 本記事は特定の暗号資産の取得を推奨するものではありません
- 将来の価格を予測することはできません。値上がりを前提にした判断は避けてください
- 取引を行う場合は、必ず余剰資金の範囲で、ご自身の判断と責任において行ってください

レイヤー2が抱えている課題
良い面だけでなく、指摘されている問題点も確認しておきましょう。
1. 中央集権的な運営という指摘
多くのレイヤー2では、取引の順序を決める「シーケンサー」を運営主体が単独で担っています。この状態では、運営側が取引を検閲したり、停止させたりできる余地が残ります。各ネットワークとも分散化を進める方針を示していますが、記事執筆時点では途上にあります。
2. 引き出しの待機期間
オプティミスティック方式では、異議申し立ての期間として引き出しに一定の待機時間が設けられています。ブリッジサービスを使えば短縮できますが、その場合はブリッジ自体のリスクを負うことになります。
3. ブリッジの脆弱性
チェーン間で資産を移動させるブリッジは、繰り返し攻撃の対象になっています。セキュリティ企業Blockaidの集計では、2026年上半期に確認された重大な攻撃は212件、被害総額は約11億ドルに達し、件数としては過去最多と報告されています。2026年4月には、リステーキングプロトコルKelpDAOのクロスチェーンブリッジから約2億9,300万ドルの資産が流出し、その影響がレンディングプロトコルにも波及する事態となりました。ブリッジは「便利な通り道」であると同時に、資金が一点に集まる場所でもあります。
4. 流動性の分断
レイヤー2が増えるほど、資産と利用者が分散します。同じトークンでもチェーンごとに残高が分かれるため、使い勝手が悪くなるという問題があります。PolygonのAggLayerやOptimismのSuperchainは、この分断を解消しようとする取り組みです。

実際にレイヤー2を使ってみる場合
- ウォレットにネットワークを追加する。公式サイトの情報から追加するのが安全です
- ガス代用のETH(Polygonの場合はPOL)を少量用意しておく
- ブリッジは公式のものを使い、初回は少額でテストする
- チェーンを間違えて送金しないよう、送金前に必ず確認する
- 取引履歴はその都度記録する。税務計算で必要になります
暗号資産と税金
暗号資産の売却益や、トークン同士の交換で生じた損益は、日本では課税対象になりえます。日本円に換金していなくても、暗号資産同士の交換時点で計算が必要になる場面があります。レイヤー2ではブリッジや交換の回数が増えやすいため、記録の管理が特に重要です。
具体的な取扱いは国税庁の公表資料を確認し、判断に迷う場合は税理士へ相談してください。また、日本国内で暗号資産を取引する際は、金融庁の登録を受けた交換業者を利用することが基本になります。

よくある質問(Q&Aコーナー)
Q. レイヤー2を使えば手数料はどのくらい下がりますか?
A. ネットワークや混雑状況によって変わりますが、イーサリアム本体と比べて大幅に低く抑えられるのが一般的です。ただし、金額は日々変動するため、実行前に画面上の見積もりを確認してください。
Q. どのレイヤー2を選べばいいですか?
A. 使いたいサービスがどのチェーンに対応しているかで決まります。DeFiの選択肢の広さを重視するならArbitrum、日常的な少額決済ならBase、といった傾向はありますが、まずは目的のサービスの対応状況を確認するのが確実です。
Q. レイヤー2の資産は安全ですか?
A. イーサリアム本体の安全性を継承する設計ですが、シーケンサーの中央集権性やブリッジの脆弱性といった固有のリスクがあります。イーサリアム本体と同等の安全性が保証されているわけではありません。
Q. MATICはもう使えないのですか?
A. Polygon上のガス代の支払いはPOLに切り替わっており、移行はほぼ完了しています。イーサリアム上にMATICを保有している場合は、Polygonの公式ポータルで1対1の比率で移行できるとされています。詳細は公式サイトの案内をご確認ください。
Q. Baseのトークンはどこで買えますか?
A. 記事執筆時点で、Baseは独自トークンを発行していません。2025年9月にネットワークトークンの検討を開始したと表明していますが、設計や時期は公表されていない段階です。「Baseのトークン」を名乗るものが出回っている場合は公式とは無関係の可能性が高いため、購入を勧められても応じないでください。
Q. ZKロールアップのほうが優れているのに、なぜ使われていないのですか?
A. 技術的な難易度が高く、イーサリアムとの互換性の確保に時間がかかったためです。先行して普及したオプティミスティック系にエコシステムが集まった結果、後発が追いつきにくい状況が生まれています。ただし、技術の成熟に伴って状況が変わる可能性はあります。
Q. レイヤー2同士で資産を移動できますか?
A. ブリッジを使えば可能ですが、手数料と待機時間、そしてブリッジ自体のリスクが伴います。頻繁に移動させるより、使うチェーンをある程度絞るほうが安全でコストも抑えられます。
まとめ
- レイヤー2はイーサリアムの外側で取引を処理し、手数料と速度を改善する仕組み
- 方式はオプティミスティックとZKの2つ。記事執筆時点では前者が資産の大半を占める
- ArbitrumとBaseが首位を争い、この2つでロールアップ全体の8割前後の資産を占める
- Baseは記事執筆時点で独自トークンを発行していない(検討開始の表明のみ)。ネットワークの成長とトークンは別の話
- 多くのレイヤー2ではガス代にETHを使い、独自トークンはガバナンス用途
- PolygonのMATICからPOLへの移行はほぼ完了しており、ガス代はPOLで支払う
- シーケンサーの中央集権性、ブリッジの脆弱性、流動性の分断が課題
レイヤー2は、イーサリアムを使いやすくするための現実的な解決策として定着してきました。ただし、トークンの値動きと技術的な優劣は別の話です。まずは低コストのチェーンで少額のトークン交換を試し、実際の使い勝手を確かめるところから始めてみてください。
各レイヤー2の預かり資産や分散化の進捗はL2BEATで確認できます。レイヤー2の基礎知識はEthereum公式のレイヤー2解説、Polygonの移行状況はPolygon公式サイトをご確認ください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資その他の勧誘を目的とするものではありません。特定の暗号資産の取得を推奨するものでもありません。暗号資産は価格変動リスクを伴い、元本や利益を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行い、必ず余剰資金の範囲でご利用ください。仕様・制度などの最新情報は各公式サイトおよび金融庁・国税庁の公表資料でご確認ください。記事執筆時点の情報です。


