Trezor(トレザー)は、チェコのSatoshiLabs社が手がけるハードウェアウォレットです。世界で最初に市販されたハードウェアウォレットとして知られ、設計や仕様が公開されている点を評価して選ぶ方も多い製品です。
この記事では、ハードウェアウォレットTrezorの使い方を、購入時のチェックポイントから初期設定、バックアップ、送受金の手順まで解説します。Trezorの使い方で押さえるべきは、開封時の封印確認と、リカバリーシードの扱い方の2点です。ここを外さなければ、あとの操作は落ち着いて進められます。

ハードウェアウォレットTrezorとは
Trezorは、秘密鍵を機器の内部に保持し、送金の承認を機器上で行うタイプのウォレットです。パソコンやスマートフォンと接続して使いますが、秘密鍵が外部へ出ることはありません。接続した端末がウイルスに感染していても、本人が機器で承認しなければ取引は成立しないという設計が、ハードウェアウォレットの根幹です。
秘密鍵の管理やウォレットの安全対策を体系的に知りたい方は、仮想通貨のセキュリティを扱った本も参考になります。
Trezorのラインナップ
| モデル | 主な特徴 |
|---|---|
| Trezor Safe 3 | セキュアエレメントを搭載した入門モデル。物理ボタンで操作する |
| Trezor Safe 5 | 触覚フィードバック付きのカラータッチスクリーンを備えた中位モデル |
| Trezor Safe 7 | 2025年10月に登場した上位モデル。バッテリーとBluetoothを備える |
| Trezor Model One/Model T | 旧世代のモデル。2026年1月に公式ストアでの販売を終了(購入済みの機器のサポートは継続) |
初代から続いたModel OneとModel Tは、2026年1月8日に公式ストアでの取り扱いが終了し、現在の主力はSafeシリーズです。これから購入するなら、セキュアエレメントを搭載したSafeシリーズから選ぶことになります。
価格はモデルによって異なり、為替やキャンペーンでも変わります。ラインナップは入れ替わることがあるため、購入前に公式ストアで最新の価格と対応通貨を確認してください。対応している通貨はモデルによって差があるため、扱いたい銘柄が対応リストに入っているかも先に見ておきましょう。
Trezorを買うときのチェックポイント
正規ルートで購入する
フリマアプリやオークションの中古品・転売品は使わないでください。リカバリーシードをあらかじめ仕込んだ機器を売る手口があり、入金した直後に資産を抜き取られる恐れがあります。Trezor公式ストア、または日本国内の正規代理店から購入するのが基本です。
封印シールを確認する
Trezor Safe 3などのモデルには、コネクタ部分にホログラムシールが貼られ、本体にも保護用のシールが施されています。これは開封の痕跡を検出するための仕組みです。シールが剥がされていたり、貼り直したような跡があったりする場合は使用を中止し、購入元に連絡してください。
アプリは公式サイトから
Trezorの管理アプリはTrezor Suiteです。アドレスバーにtrezor.ioと直接入力し、公式サイトからダウンロードします。検索結果の広告枠や、SNSで案内されたリンクからは入れないでください。

【初期設定】Trezorの使い方 ステップ1
手順1:Trezor Suiteを導入して機器を接続する
公式サイトからTrezor Suiteをダウンロードして起動し、USBケーブルで機器を接続します。Suiteが機器を認識すると、セットアップの案内が表示されます。
手順2:ファームウェアをインストールする
出荷時の機器にはファームウェアが入っていない状態で届きます。Suiteの案内に従ってインストールしてください。これも真正性を確かめるための仕組みのひとつで、すでにファームウェアが入っている機器が届いた場合は注意が必要です。
手順3:新しいウォレットを作成する
「新しいウォレットを作成」を選びます。すでに別のウォレットを持っていて復元したい場合は、リカバリーの項目からシードを入力します。
手順4:リカバリーシードをバックアップする
機器の画面に、12または24個の英単語が順番に表示されます。同梱のリカバリーカードに、番号と単語を正確に書き写してください。このリカバリーシードが、ウォレット全体のマスターバックアップになります。
- リカバリーシードは写真に撮らない、クラウドに保存しない、メールで送らない
- パソコンやスマートフォンに入力しない(機器の画面だけで完結させる)
- Trezorのサポートを名乗る相手がシードを聞いてきたら100%詐欺
- 書き写した後、単語の綴りと順番を機器の画面と照合する
- 保管場所を決めてから作業を終える
リカバリーカードの保管場所としては、耐火金庫を使う方法もあります。
手順5:PINを設定する
機器のロックを外すためのPINを決めます。Trezorでは、機器の画面に数字の配置が表示され、パソコン側では位置だけを選ぶ方式が採られています。これは、パソコンの入力を記録されても数字が漏れないようにするための工夫です。
手順6:Suiteでウォレットを開く
設定が完了すると、Suiteの画面から残高の確認や送受金ができるようになります。使いたい通貨のアカウントを追加して、準備は完了です。
【バックアップ】Trezorならではの選択肢
Trezorの使い方で特徴的なのが、バックアップ方式の選択肢が用意されている点です。
標準バックアップ(BIP-39)
12または24単語のシードを1組だけ作る、もっとも一般的な方式です。書き写す量が少なく分かりやすい一方、その1組を失うと復元手段がなくなります。
Shamirバックアップ(SLIP-0039)
1つの秘密を複数のシェア(断片)に分割し、あらかじめ決めた数のシェアが揃ったときだけ復元できる方式です。たとえば5枚のシェアを作り、そのうち3枚で復元できるように設定する、といった運用ができます。
- 1枚のシェアが盗まれても、それだけでは資産にたどり着けない
- 1枚を紛失しても、残りの枚数が足りていれば復元できる
- 離れた場所へ分散保管する運用と相性がよい
- 相続や、家族との共同管理の設計にも使われる
- 枚数と必要数の設計を間違えると、自分でも復元できなくなるので慎重に
Shamirバックアップには、グループごとに閾値を設ける多層的な設定(Super Shamir)もあります。柔軟性は高いものの、その分だけ運用設計の難易度も上がります。扱う金額と、自分が管理し続けられる複雑さのバランスで選んでください。

【送受金】Trezorの使い方 ステップ2
受け取りの手順
Trezor Suiteで通貨のアカウントを開き、「受取」を選びます。アドレスが表示されたら、機器の画面にも同じアドレスが出るので、両者が一致していることを確認してください。ここでの照合が、アドレスすり替えへの備えになります。
確認できたら、そのアドレスを送金元に伝えます。はじめての送金では、まず少額を送って着金を確かめるのが確実です。
送金の手順
「送信」から宛先アドレスと金額を入力すると、機器の画面に取引内容が表示されます。宛先と金額、手数料を読んだうえで承認ボタンを押します。承認しなければ取引は送信されません。
パスフレーズ機能を使う
Trezorには、リカバリーシードに追加の合言葉を組み合わせる機能があります。合言葉ごとに別のウォレットが開くため、シードが盗まれても合言葉を知らなければ資産にたどり着けません。ただし合言葉を忘れると自分自身も復元できなくなるため、使う場合は保管方法まで含めて設計してください。
Trezorを使ううえで残るリスク
| リスク | 備え方 |
|---|---|
| 機器の故障・紛失 | リカバリーシードから別の機器で復元する |
| シードの紛失・焼失 | 金属プレートへの刻印、分散保管を検討する |
| フィッシングでシードを入力 | シードは機器以外に入力しないと決めておく |
| 偽の管理アプリ | trezor.ioをブックマークして、そこからのみ入手する |
| 改ざんされた中古機器 | 正規ルートで購入し、封印を確認する |
| パスフレーズの失念 | 使う場合は保管方法まで含めて設計する |
ハードウェアウォレットを使っても、これらのリスクが消えるわけではありません。安全が保証された状態はないという前提で、自分の運用を組み立ててください。
シードを金属に刻んで残す場合は、市販のステンレス製プレートを使う方法があります。
被害に遭ってしまったときの相談先
シードを入力してしまった、資産が勝手に動いたという場合は、時間を置かずに相談してください。警察庁の集計では、インターネットバンキングに係る不正送金の被害額が2025年に約103億円と過去最多を更新し、その多くがフィッシングを起点としています。
- 警察相談専用電話「#9110」
- 消費者ホットライン「188」
- 金融庁 金融サービス利用者相談室
- 各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口
Q&A:ハードウェアウォレットTrezorの使い方についてよくある質問
Q. TrezorとLedgerはどちらを選ぶべきですか?
A. どちらも広く使われている製品で、優劣を一律に決められるものではありません。Trezorは設計の公開性やShamirバックアップ、LedgerはBluetooth対応や対応通貨の幅といった違いがあります。扱いたい通貨と、自分が使いたい機能で選んでください。
Q. Trezorが壊れたら資産はどうなりますか?
A. リカバリーシードがあれば、新しい機器や対応するウォレットで復元できます。シードを失っていると復元手段はありません。
Q. スマートフォンでも使えますか?
A. モデルと接続方法によって対応状況が異なります。対応の可否は公式サイトで確認してください。
Q. MetaMaskと連携できますか?
A. できます。MetaMaskのハードウェアウォレット接続からTrezorを選び、署名をTrezor側で行う形になります。DeFiやNFTを扱いながら秘密鍵を機器内に留められます。
Q. リカバリーシードは何単語ですか?
A. 標準バックアップでは12または24単語です。Shamirバックアップを選ぶと、20単語のシェアが複数枚という形になります。
Q. しばらく使わなくても問題ありませんか?
A. 資産はブロックチェーン上に残るので、機器を使わない期間があっても消えることはありません。ただしファームウェアの更新が必要になることがあるため、時々は接続して状態を確認しておくと安心です。
Q. 封印シールに少し傷がありました。使っても大丈夫ですか?
A. 判断に迷う状態であれば、購入元に問い合わせてください。輸送中の擦れであることも多いのですが、改ざんの可能性を自分で切り分けるのは困難です。不安を抱えたまま使い続けるより、確認してから進めるほうが結果的に安全です。
Q. ファームウェアの更新はどのタイミングで行いますか?
A. Trezor Suiteが更新を案内したときに行います。メールやSNSのリンクから更新作業に入るのは避けてください。更新前に、リカバリーシードの控えが手元にあることを確認しておきましょう。
Q. PINを忘れてしまった場合はどうなりますか?
A. 機器を初期化したうえで、リカバリーシードから復元する流れになります。シードがなければ復旧手段はありません。
Q. 家族に機器の存在を伝えておくべきですか?
A. 本人しか知らない状態だと、万が一のときに資産が取り出せなくなります。シードそのものではなく、機器と控えの保管場所を伝える方法や、Shamirバックアップで断片を分けて預ける方法などが考えられます。相続に関わる部分は専門家への相談も検討してください。
まとめ:Trezorの使い方は「封印確認」と「シードの守り方」から
- Trezorは秘密鍵を機器内に保持するハードウェアウォレット
- 公式ストアか正規代理店で購入し、封印シールを確認してから使う
- Trezor Suiteは公式サイト(trezor.io)からのみ入手する
- リカバリーシードは機器の画面だけで完結させ、撮影・入力をしない
- Shamirバックアップを使えば、分散保管や相続の設計がしやすくなる
- 受金アドレスは機器の画面で照合し、少額でテストしてから本番へ
ハードウェアウォレットの導入は、資産を自分で守るという方向へ一歩踏み出すことでもあります。手間は増えますが、その手間の分だけリスクを減らせます。まずは少額から始めて、操作に慣れながら金額を増やしていくのが現実的な進め方です。

参考:Trezor 公式サイト|Trezor 公式ガイド(SLIP39 FAQ)|金融庁 暗号資産(仮想通貨)関連
※記事執筆時点の情報です。製品仕様・価格・ラインナップは変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトおよび金融庁のサイトでご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、元本が保証された商品ではありません。投資は自己責任で、必ず余剰資金の範囲内で行ってください。


