MetaMaskを開いたら、そこに表示されているのはイーサリアムのメインネットだけ。「ポリゴンのトークンを受け取ったはずなのに、残高が0のまま」「BNBチェーンに送金したのに見当たらない」。そんなときに必要になるのが、ネットワークの追加という作業です。
MetaMaskはイーサリアム系の複数のブロックチェーンに対応していますが、初期状態で表示されるネットワークは限られています。資産が消えたのではなく、対応するネットワークが表示されていないだけというケースはとても多いです。この記事では、MetaMaskにネットワークを追加する方法を、手動設定とChainlist経由の2通りで解説し、あわせて偽RPCという見過ごされがちな危険についてもお伝えします。

そもそもネットワークとは何か
ブロックチェーンには、イーサリアムのメインネットの他にも数多くの種類があります。ポリゴン、アービトラム、オプティミズム、BNBチェーン、アバランチなど、それぞれが独立した台帳を持っています。MetaMaskは同じアドレスで複数のネットワークを扱えますが、表示するには、そのネットワークの接続情報を登録しておく必要があります。
追加に必要な5つの情報
MetaMaskにネットワークを手動で追加するときは、次の情報を入力します。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| ネットワーク名 | MetaMask上での表示名(自由に決められる) |
| 新しいRPC URL | ブロックチェーンとやり取りするための接続先 |
| チェーンID | ネットワークを識別する固有の番号 |
| 通貨記号 | 手数料に使う通貨の単位(ETH、POLなど) |
| ブロックエクスプローラーURL | 取引履歴を確認するサイトのアドレス(任意) |
このうち、安全面でとりわけ重要なのがRPC URLです。RPCはあなたの端末とブロックチェーンの間に立つ中継地点であり、ここを悪意のある相手に握られると、取引内容の改ざんや送金先のすり替えといった攻撃を受ける恐れがあります。
ネットワークやRPCの仕組みは、イーサリアムの解説書で全体像を押さえておくと理解しやすくなります。
【方法1】MetaMaskにネットワークを手動で追加する手順
手順1:ネットワーク一覧を開く
MetaMaskの画面左上(スマートフォンアプリではメニュー内)にある、現在のネットワーク名が書かれた部分をタップします。すると、登録済みのネットワーク一覧が表示されます。
手順2:「ネットワークを追加」を選ぶ
一覧の下部にある「ネットワークを追加」を押します。MetaMaskが用意している主要ネットワークの候補が並ぶので、目的のものがあればそこから追加できます。候補にない場合は「ネットワークを手動で追加」へ進みます。
手順3:情報を入力して保存する
先ほどの表にある5項目を入力します。ここで入力するRPC URLとチェーンIDは、必ずそのブロックチェーンの公式ドキュメントから取得してください。SNSやブログに貼られていた値をそのまま使うのは避けるのが基本です。入力後に保存を押すと、ネットワークが一覧に追加されます。
手順4:ネットワークを切り替えて残高を確認する
追加したネットワークを選ぶと、そのチェーン上の残高が表示されます。ここで残高が反映されていれば、資産は無事です。トークンが表示されない場合は、ネットワークの問題ではなくトークンのインポートが必要なケースが考えられます。
チェーンIDの入力ミスは、よくある失敗のひとつです。値が違うとMetaMaskがエラーを出したり、接続はできても正しく動作しなかったりします。ネットワーク追加でつまずいたら、まずチェーンIDを公式ドキュメントと照合してみてください。

【方法2】Chainlistを使ってネットワークを追加する方法
手動入力が面倒な場合は、Chainlist(chainlist.org)というサイトを使う方法があります。多数のネットワーク情報がまとめられていて、MetaMaskを接続してボタンを押すだけで追加できます。
Chainlistでの追加手順
- アドレスバーに chainlist.org と直接入力してアクセスする
- 右上の「Connect Wallet」でMetaMaskを接続する
- 検索窓に追加したいネットワーク名を入力する
- 目的のネットワークの「Add to MetaMask」を押す
- MetaMaskのポップアップで内容を確認し、承認する
ここで大事なのは、最後の承認画面を読み飛ばさないことです。MetaMaskは追加しようとしているネットワーク名・チェーンID・RPC URLを表示します。表示された内容が自分の意図したネットワークと一致しているかを、承認前に確認する習慣をつけてください。
偽RPC・偽ネットワークという見えにくい危険
ネットワーク追加の手順自体は数分で終わります。しかし、この作業には特有の落とし穴があります。それが偽RPCです。
偽RPCで何が起きるのか
RPCは、あなたのウォレットとブロックチェーンをつなぐ窓口です。悪意のあるRPCに接続してしまうと、残高が水増しされて表示される、送金先アドレスがすり替えられる、承認内容が実際と異なるものになる、といった事態が起こり得ます。見えている画面が本当のブロックチェーンの状態とは限らないというのが、この攻撃の怖さです。
偽ネットワークが仕込まれる経路
- SNSのDMやDiscordで「このリンクからネットワークを追加して」と誘導される
- 偽のプロジェクトサイトに、ネットワーク追加ボタンが仕込まれている
- 検索結果の広告枠に表示された偽のChainlist風サイト
- 「エアドロップを受け取るには専用チェーンの追加が必要」といった案内
共通しているのは、こちらから探しに行ったのではなく、向こうから来た誘導であるという点です。ネットワークの追加が必要になるのは、通常は自分がそのチェーンを使いたいと考えたときです。誰かに促されて追加する場面は、そもそも疑ってかかるべきタイミングだと考えてください。
こうした誘導のパターンは、詐欺の手口を解説した本に一度目を通しておくと気づきやすくなります。
安全にネットワークを追加するための確認事項
- RPC URLとチェーンIDは、そのチェーンの公式ドキュメントから取得する
- Chainlistなどのサイトはアドレスを直接入力して開き、ブックマークしておく
- 承認画面に表示されたネットワーク名・チェーンID・RPCを読んでから承認する
- 他人から促されたネットワーク追加は、いったん保留にする
- 不要になったネットワークは設定画面から削除しておく

ネットワーク追加でよくあるトラブルと対処法
追加したのに残高が表示されない
ネイティブ通貨(ETHやPOLなど)は自動で表示されますが、それ以外のトークンは個別にインポートしないと出てきません。ネットワークを追加しても表示されない場合は、トークンのインポート作業が必要かどうかを確認してください。
「このチェーンIDは既に使われています」と出る
同じチェーンIDのネットワークがすでに登録されている場合に表示されます。設定画面のネットワーク一覧を確認し、重複している方を削除するか、既存のものをそのまま使ってください。
RPCがつながらない・タイムアウトする
公開されているRPCは、混雑時に応答が遅くなることがあります。同じチェーンの別の公式RPCに切り替えると解決する場合があります。ただし、切り替え先も公式が案内しているものから選んでください。
間違って送金してしまった
ネットワークを取り違えて送金した場合、対処は状況によって大きく変わります。同じアドレスが別チェーンにも存在するケースでは、そのチェーンのネットワークを追加すれば見つかることがあります。一方、対応していない相手先へ送った場合は取り戻せないこともあります。送金前にネットワークを確認し、少額でテストすることが最大の予防策です。
被害に遭ってしまったときの相談先
偽のネットワークやRPCを使ってしまい、資産が動かされた場合は速やかに相談してください。警察庁の集計では、インターネットバンキングに係る不正送金の被害額が2025年に約103億円と過去最多を更新し、その手口の大半がフィッシングを起点としています。
- 警察相談専用電話「#9110」
- 消費者ホットライン「188」
- 金融庁 金融サービス利用者相談室
- 各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口
Q&A:MetaMaskのネットワーク追加についてよくある質問
Q. ネットワークを追加するのに費用はかかりますか?
A. 追加そのものは無料です。ただし、そのネットワーク上で取引を行うには、手数料用のネイティブ通貨が必要になります。たとえばPolygon PoSの場合、以前はMATICでしたが、2024年9月に始まったトークン移行によって現在はPOLで支払う形に変わっています。古い解説記事の通貨記号をそのまま入力しないよう注意してください。
Q. 追加できるネットワークの数に上限はありますか?
A. 実用上の上限を気にする必要はほとんどありません。ただし数が増えると管理が煩雑になるため、使わないものは削除しておくほうが安全です。
Q. ネットワークごとにアドレスは変わりますか?
A. イーサリアム系(EVM互換)のネットワークであれば、同じアドレスが使えます。ただし、ビットコインなど仕組みの異なるチェーンは別のアドレス体系です。
Q. テストネットを表示するにはどうすればいいですか?
A. 設定の「詳細」からテストネットの表示をオンにすると、ネットワーク一覧に表示されます。開発や検証の用途以外では、オフのままにしておくと誤送金を防げます。
Q. 追加したネットワークを削除しても資産は消えませんか?
A. 消えません。ネットワークの登録はMetaMask側の表示設定にすぎず、ブロックチェーン上の資産には影響しません。再度追加すれば、また表示されます。
Q. 会社の共有パソコンでネットワークを追加しても大丈夫ですか?
A. 共有端末でウォレットを扱うこと自体をおすすめしません。他の利用者が拡張機能を操作できる環境では、資産の安全を保つのが難しくなります。
自分の端末を外出先で使う場合も、画面ののぞき見に気を配っておくと安心です。
Q. ネットワークを追加したのに、MetaMaskに表示されません
A. ネットワーク一覧を下までスクロールしてみてください。追加したものは一覧の下部に並びます。それでも見当たらない場合は、保存が完了していない可能性があるため、もう一度手順をやり直してみましょう。
Q. 公式のRPCはどこで確認できますか?
A. 各ブロックチェーンの公式サイトや開発者向けドキュメントに記載されています。プロジェクトの公式SNSから公式サイトへ辿り、そこに書かれた値を使うのが基本の流れです。
Q. 一度追加したネットワークのRPCだけを変更できますか?
A. できます。設定のネットワーク一覧から該当のネットワークを選び、RPC URLの項目を編集してください。変更後は、少額の送金で正常に動作するかを確かめておくと安心です。
Q. ハードウェアウォレットと組み合わせている場合も同じ手順ですか?
A. ネットワークの追加自体はMetaMask側の操作なので同じです。ただし、機器側がそのチェーンに対応しているかは別問題になります。対応状況はメーカーの公式サイトで確認してください。
まとめ:ネットワーク追加は「情報の出どころ」がすべて
- MetaMaskへのネットワーク追加は、手動入力とChainlist経由の2通り
- 必要な情報はネットワーク名・RPC URL・チェーンID・通貨記号・エクスプローラー
- RPC URLとチェーンIDは公式ドキュメントから取得する
- 偽RPCは取引の改ざんにつながる危険があり、承認前の確認が欠かせない
- 他人から促されたネットワーク追加はいったん保留にする
- 使わないネットワークは削除して、画面をすっきりさせておく
ネットワークの追加は作業としては単純ですが、どこから情報を持ってきたかで安全性がまったく変わります。安全が保証された追加方法というものはなく、公式情報を確認する手間を惜しまないことが、結果としてもっとも堅実な守り方になります。

参考:MetaMask ヘルプセンター(日本語)|IPA 情報処理推進機構 アカウントセキュリティ|金融庁 暗号資産(仮想通貨)関連
※記事執筆時点の情報です。仕様・画面表示は変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトおよび金融庁のサイトでご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、元本が保証された商品ではありません。投資は自己責任で、必ず余剰資金の範囲内で行ってください。


