仮想通貨をある程度の額まで増やしてきた方が、次に検討するのがハードウェアウォレットです。中でもLedger(レジャー)は、フランスのLedger社が手がける代表的な製品で、日本でも利用者が多いシリーズです。
ただ、届いた箱を開けてみると小さな端末とケーブルだけ。「これをどう使えばいいのか」と手が止まる方は少なくありません。この記事では、ハードウェアウォレットLedgerの使い方を、購入時の注意点から初期設定、送受金の手順まで順を追って解説します。機器の操作そのものより、購入経路と初期設定の作法のほうがはるかに重要ですので、そこを丁寧にお伝えします。

ハードウェアウォレットLedgerとは
Ledgerは、秘密鍵を専用のチップの中に閉じ込めて管理する小型の機器です。パソコンやスマートフォンに接続して使いますが、秘密鍵そのものは機器の外に出ません。送金の承認は端末の物理ボタンやタッチ操作で行うため、パソコンがウイルスに感染していても、本人が機器上で承認しない限り送金は成立しないという構造になっています。
秘密鍵の管理やウォレットの安全対策を体系的に知りたい方は、仮想通貨のセキュリティを扱った本も参考になります。
Ledgerのラインナップ
| モデル | 主な特徴 |
|---|---|
| Nano S Plus | USB接続の入門モデル。物理ボタンで操作する |
| Nano X | Bluetooth対応でスマートフォンとケーブルなしで使える |
| Nano Gen5 | 2025年10月に発表された新世代モデル。タッチスクリーンとBluetooth・NFCに対応 |
| Flex | E Inkのタッチスクリーンを搭載した中位モデル |
| Stax | 大画面の曲面E Inkタッチスクリーンを備えた上位モデル |
価格はモデルによって差があり、為替やキャンペーンでも変動します。ラインナップは入れ替わることがあるため、購入前に公式ストアで最新の価格・在庫と、扱いたい通貨への対応を確認してください。はじめてであれば、まずは入門モデルで運用に慣れるという選び方も現実的です。
Ledgerを買うときの注意点
ハードウェアウォレットの使い方を語るうえで、購入経路の話は避けて通れません。ここを誤ると、どれだけ丁寧に使っても資産を守れなくなります。
中古品・転売品は使わない
フリマアプリやオークションで出品されているハードウェアウォレットは購入しないでください。あらかじめリカバリーフレーズを仕込んだ状態で売られていた場合、入金した瞬間に出品者側から資産を抜き取られます。「未開封」と書かれていても、封を作り直すことは可能です。
正規の販売経路から買う
Ledger公式のオンラインストア、または日本国内の正規代理店から購入します。購入後は、Ledger Liveのアプリが機器の真正性を確認する仕組みが働きます。この確認が通らない機器は使わないでください。
2020年の情報流出とその後の詐欺
Ledger社は2020年7月に不正アクセスを受け、顧客のメールアドレスなど約100万件、氏名・住所・電話番号を含む詳細な情報も一部が流出しました。この流出データを悪用したフィッシングメールや、偽の郵送物が実際に確認されています。「セキュリティ上の問題が見つかったので新しい機器を送ります」といった案内で偽デバイスを送りつけたり、フレーズの入力を求めたりする手口です。
- Ledgerがリカバリーフレーズを尋ねることは一切ない
- アプリは公式サイト(ledger.com)からのみダウンロードする
- 身に覚えのない交換品・アップデート機器が届いても使わない
- メールのリンクではなく、ブックマークから公式サイトを開く
- 偽の公式チャンネルを装った動画やSNSアカウントにも注意する

【初期設定】Ledgerの使い方 ステップ1
手順1:Ledger Liveを公式サイトから入れる
Ledger Liveは、機器の設定や残高確認、送受金を行う管理アプリです。アドレスバーにledger.comと直接入力し、公式サイトからダウンロードします。検索結果の広告枠は踏まないでください。
Ledger社は2026年6月に、このアプリの名称を「Ledger Wallet」へ変更すると発表しています。移行は段階的に進んでいるため、環境によってストアやアプリ上の表記が「Ledger Live」と「Ledger Wallet」で異なる場合があります。どちらの名前で表示されていても中身は同じ公式アプリですが、名称変更に便乗した偽アプリが出回る可能性もあるため、入手先は必ず公式サイトに限定してください。この記事では従来どおり「Ledger Live」と表記して説明を進めます。
手順2:機器を接続して新規セットアップを選ぶ
Ledger Liveを開き、USBケーブル(Nano Xの場合はBluetoothも可)で機器を接続します。案内に従って進み、新しい機器として初期化する項目を選びます。すでに使っていた機器を復元する場合は、復元の項目を選んでフレーズを入力します。
手順3:PINコードを設定する
機器のロックを外すための暗証番号を決めます。4〜8桁で設定でき、桁数が多いほど安全です。誕生日や連番など、推測されやすい数字は避けてください。PINを一定回数間違えると機器は初期化されますが、リカバリーフレーズがあれば復元できます。
手順4:リカバリーフレーズを控える
機器の画面に24個の英単語が順番に表示されます。同梱のリカバリーシートに、番号と単語を正確に書き写してください。ここがLedgerの使い方全体で最も重要な工程です。
リカバリーフレーズはスクリーンショットを撮らない、クラウドに保存しない、メールで送らない。パソコンやスマートフォンに一度でも打ち込んだ時点で、ハードウェアウォレットを使う意味が大きく損なわれます。紙か金属プレートに、手で記録してください。
金属に残す場合は、市販のステンレス製プレートを使う方法があります。
手順5:フレーズの確認とアプリのインストール
書き写した単語を、機器上で選択して確認する作業があります。これが終わると初期設定は完了です。続いてLedger Liveから、扱いたい通貨のアプリ(Bitcoin、Ethereumなど)を機器にインストールします。機器の容量には限りがあるため、使う通貨のアプリだけ入れておくとよいでしょう。
【送受金】Ledgerの使い方 ステップ2
受け取り(入金)の手順
- Ledger Liveで「受取」を選び、通貨とアカウントを指定する
- 機器側にアドレスが表示されるので、画面の表示と照合する
- 機器の画面に出たアドレスと、パソコンの画面のアドレスが一致することを確認する
- 一致していれば、そのアドレスを送金元に伝える
- まずは少額を送って着金を確認してから、本番の額を送る
この「機器の画面で照合する」工程には意味があります。パソコンがマルウェアに感染していると、画面上のアドレスがすり替えられている恐れがあるためです。機器の小さな画面に表示された文字列こそが、信頼できる情報だと覚えておいてください。
送金の手順
Ledger Liveで「送信」を選び、送金先アドレスと金額を入力します。すると機器側に送金内容が表示されるので、宛先と金額を確認したうえでボタンを押して承認します。承認しない限り取引は成立しません。
MetaMaskと連携して使う
LedgerはMetaMaskと接続して使うこともできます。MetaMaskの画面から操作しつつ、署名はLedger側で行うという形です。DeFiやNFTを扱いながら秘密鍵を機器内に留めておけるため、活用している方が多い使い方です。接続は、MetaMaskのアカウントメニューから「ハードウェアウォレットを接続」で行います。

Ledgerを使ううえで残るリスク
ハードウェアウォレットは有効な選択肢ですが、これを使えば安全が保証されるわけではありません。残るリスクを正直に整理しておきます。
| リスク | 備え方 |
|---|---|
| 機器の故障・紛失 | リカバリーフレーズがあれば別の機器で復元できる |
| 火災・水害でフレーズが失われる | 金属プレートへの刻印、分散保管を検討する |
| フィッシングでフレーズを入力してしまう | フレーズをどこにも入力しないと決めておく |
| 偽アプリ・偽サイト | 公式サイトをブックマークして、そこからのみ開く |
| 悪意ある契約への署名 | 機器画面の内容を読んでから承認する |
| 相続・本人の急病 | 保管場所の伝え方を家族と設計しておく |
リカバリーシートを紙のまま保管する場合は、火や水に強いケースと組み合わせる方法もあります。
被害に遭ってしまったときの相談先
フレーズを入力してしまった、身に覚えのない送金が発生したという場合は、早めに相談してください。警察庁の集計では、インターネットバンキングに係る不正送金の被害額が2025年に約103億円と過去最多を更新し、その多くがフィッシングを起点としています。
- 警察相談専用電話「#9110」
- 消費者ホットライン「188」
- 金融庁 金融サービス利用者相談室
- 各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口
Q&A:ハードウェアウォレットLedgerの使い方についてよくある質問
Q. Ledgerが壊れたら資産はどうなりますか?
A. リカバリーフレーズが手元にあれば、新しい機器や対応するウォレットアプリで復元できます。逆にフレーズを失っていると、機器の故障がそのまま資産の喪失につながります。
Q. 1台で複数の通貨を管理できますか?
A. できます。Ledger Liveから通貨ごとのアプリをインストールして使います。機器の容量に応じて、同時にインストールできるアプリ数には上限があります。
Q. Bluetooth接続は安全ですか?
A. Nano XのBluetooth接続では、秘密鍵が送信されることはありません。送金の承認は機器上で行う設計のままです。気になる場合はUSB接続でも使えます。
Q. Ledger Liveを使わずにMetaMaskだけで使えますか?
A. MetaMaskとの接続だけでも日常の操作は可能ですが、ファームウェアの更新や機器の状態確認にはLedger Liveが必要になります。
Q. リカバリーフレーズは24単語ですか?
A. Ledgerの初期設定では24単語のフレーズが生成されます。MetaMaskの12単語とは長さが異なりますが、役割は同じです。
Q. 使わない期間が長くても大丈夫ですか?
A. 機器を使わなくてもブロックチェーン上の資産は残ります。ただし、ファームウェアやアプリの更新が必要になることがあるため、時々は起動して状態を確認しておくと安心です。
Q. Ledger Liveから偽の通知が届くことはありますか?
A. アプリ内の通知を装ったフィッシングの報告があります。通知やメールのリンクからではなく、ブックマークした公式サイトから確認する習慣をつけてください。どのような案内であっても、リカバリーフレーズの入力を求められた時点で詐欺です。
Q. ファームウェアの更新はしたほうがいいですか?
A. 更新には不具合の修正や機能の追加が含まれます。ただし、更新の案内はLedger Live内の正規の通知から確認し、メールのリンクからは行わないでください。更新前にリカバリーフレーズの控えが手元にあることを確かめておくと安心です。
Q. 家族に機器の存在を伝えておくべきですか?
A. 万が一のときに資産が誰にも取り出せなくなる問題があります。フレーズそのものではなく、機器と控えの保管場所を伝える、遺言や信託の枠組みを使うなど、状況に応じた設計を検討してください。相続に関わる部分は専門家への相談もおすすめします。
Q. PINを忘れてしまいました
A. PINを一定回数間違えると機器は初期化されます。リカバリーフレーズが手元にあれば、その機器を再セットアップして復元できます。フレーズがない場合は復旧手段がありません。
まとめ:Ledgerの使い方は「正規購入」と「フレーズ管理」に尽きる
- ハードウェアウォレットは秘密鍵を機器内に閉じ込める仕組み
- 公式ストアか正規代理店で購入し、中古・転売品は使わない
- Ledger Live(「Ledger Wallet」へ名称変更が進行中)は公式サイト(ledger.com)からのみ入手する
- 2020年の情報流出を悪用したフィッシングが続いている
- リカバリーフレーズはどこにも入力しない、撮影しない
- 受金アドレスは機器の画面で照合し、少額でテストしてから本番へ
ハードウェアウォレットを導入しても、紛失・故障・災害・詐欺のリスクがゼロになるわけではありません。それでも、パソコンの外に鍵を置くという発想は、資産を守るうえで大きな一歩です。使い方に慣れながら、フレーズの保管方法まで含めて自分の運用を作っていってください。

参考:Ledger 公式サイト(日本語)|IPA 情報処理推進機構 アカウントセキュリティ|金融庁 暗号資産(仮想通貨)関連
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※記事執筆時点の情報です。製品仕様・価格・ラインナップは変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトおよび金融庁のサイトでご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、元本が保証された商品ではありません。投資は自己責任で、必ず余剰資金の範囲内で行ってください。


