「Bybitって日本人でも使えるの?」——検索でよく見かける疑問です。海外の取引所は取扱銘柄が多かったり機能が豊富だったりするため、気になる方が多いのもうなずけます。
まず結論をお伝えします。Bybitは日本の暗号資産交換業者として金融庁の登録を受けておらず、日本居住者向けのサービスは段階的に終了する方針が示されています。記事執筆時点で、日本に住んでいる方が新しく口座を開いて取引を始めることはできません。
この記事では、日本の規制がどういう仕組みになっているのか、なぜBybitがこの状況になったのか、そして無登録業者を使うことが利用者にとって何を意味するのかを、法規制の観点から整理します。感情論ではなく、制度の中身を理解するための内容です。

日本の暗号資産規制はどうなっているのか
登録制という仕組み
日本では、暗号資産の売買や交換をサービスとして提供する事業者は、資金決済に関する法律にもとづく登録が必要です。同法第63条の2は、暗号資産交換業は内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行ってはならない、と定めています。
この登録制度は、国内で起きた大規模な流出事件などを受けて整備が進められてきた経緯があります。利用者の資産を守るための最低限のルールを、事業者に義務づける——それが登録制の目的です。
登録業者に課されている主な義務
- 利用者の財産と自己の財産を分けて管理すること(分別管理)
- 利用者から預かった暗号資産の一定割合以上をコールドウォレットなどで管理すること
- 広告や勧誘に関する規制を守ること
- 当局への報告や検査に応じること
- 利用者への情報提供やリスク説明を適切に行うこと
登録を受けた事業者は金融庁が公表している暗号資産交換業者登録一覧に掲載されます。ここに名前があるかどうかが、業者選びの最初の分かれ道になります。
登録制度の背景を含め、暗号資産の基本を一冊で押さえておくと業者選びの判断がしやすくなります。
Bybitに対する金融庁の警告
金融庁は、無登録で日本国内の利用者に暗号資産交換業を行っていると認められる業者に対し、警告書を発出し、その事実を公表しています。
Bybitに対しては、これまでに3度の警告が出されています。時期は2021年5月、2023年3月、2024年11月とされています。3回という数字は、状況が長く続いていたことを示しています。
警告は「この業者は日本の登録を受けずに国内の利用者向けにサービスを提供している」という公的な注意喚起です。利用者側に対して直ちに罰則が科されるものではありませんが、その業者を使うことで生じるトラブルについて、日本の当局が同じように対応できるわけではないという現実を示しています。
日本居住者向けサービス終了までの流れ
Bybitは日本居住者向けのサービスについて、段階的な終了を進めてきました。公表されている内容を時系列でまとめます。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年10月31日 | 日本居住者向けの新規口座開設の受付を停止 |
| 2025年12月22日 | 日本居住者向けサービスの提供終了を発表 |
| 2026年1月22日 | 本人確認レベル2(住所証明)の期限。未完了の場合は日本居住者として扱われる旨が案内された |
| 2026年3月23日 | 日本居住者の口座がクローズオンリー(close-only)へ移行し、新規のポジション構築・追加が不可に |
| 2026年7月22日 | 未決済ポジションの一斉強制決済が実施 |
記事執筆時点では、日本居住者の口座で利用できるのはBTC・ETH・USDCへの変換と、暗号資産や法定通貨の出金といった機能に限られると案内されています。通常の売買はできない状態です。

「日本居住者かどうか」はどう判定されるのか
海外の取引所が居住地を確認する主な材料は、本人確認(KYC)で提出された書類です。Bybitの案内でも、住所証明を含む本人確認の段階が居住地の確定と結びつけられていました。
ここで強調しておきたいのは、居住地の判定を避けるために事実と異なる情報を申告する、といった対応は取るべきではないということです。虚偽の申告は利用規約違反にあたり、口座の凍結や出金の停止につながるおそれがあります。資産を守るつもりの行動が、逆に資産を取り出せなくする結果になりかねません。
また、日本の居住者であれば、たとえ海外の業者を使っていても、そこで得た所得は日本の課税対象です。居住地を偽ることは税務上の問題にも直結します。
無登録業者を使うと利用者はどうなるのか
無登録業者を利用すること自体が、利用者側の違法行為になるわけではありません。ただし、置かれる立場は国内の登録業者を使う場合と大きく異なります。
| 観点 | 国内の登録業者 | 無登録の海外業者 |
|---|---|---|
| 法令にもとづく監督 | 金融庁の監督・検査の対象 | 日本の当局の監督は及ばない |
| 分別管理・保管の義務 | 法令上の義務がある | 同等の義務が課されているとは限らない |
| トラブル時の相談先 | 国内の窓口や自主規制団体がある | 基本的に業者との直接交渉 |
| サービス継続性 | 登録の枠組みのもとで運営 | 方針転換で突然利用できなくなる場合がある |
実際、Bybitのケースはこの表の最後の行がそのまま現実になった例といえます。サービスが使えなくなる決定は、利用者の意思とは関係なく行われる——この事実は、業者を選ぶときの重い判断材料になります。
加えて、2025年2月には約15億ドル相当とされる暗号資産が不正に流出する事件も報じられました。取引所に資産を預けることのリスクは、規制の枠組みの内外を問わず存在しますが、何かあったときに頼れる制度があるかどうかは大きな違いです。
口座が残っている方へ
- ログインして現在の口座ステータスと残高を確認する
- 出金できる資産と方法、期限を公式の案内で確かめる
- 受け取り先となる自分名義のウォレットや国内取引所を用意する
- 送付先のアドレスとネットワークを慎重に確認し、少額でテストする
- 取引履歴をダウンロードして保存する(確定申告に必要)
公式の案内は更新される可能性があります。条件や期限は、SNSや掲示板の伝聞ではなく、公式アナウンスで直接確認してください。国内の取引所へ送る場合は、受取側がその銘柄と海外からの送付に対応しているかも事前に確認が必要です。
税制の面でも扱いが違う
暗号資産の売却などで生じた利益は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得に区分され、給与など他の所得と合算する総合課税の対象となります。詳細は国税庁のタックスアンサーで確認できます。
あわせて押さえておきたいのが、税制改正の動きです。暗号資産の譲渡益を申告分離課税(税率20.315%)の対象とする改正所得税法は2026年3月31日に成立・公布され、関連する金融商品取引法・資金決済法の改正法も2026年7月15日に成立しています。ただしその対象は、国内の登録業者を通じて取引される「特定暗号資産」に限られる見込みで、海外業者やDEXでの取引は引き続き総合課税の扱いになると整理されています。
適用が始まる時期にも注意が必要です。分離課税が適用されるのは金融商品取引法の改正が施行された年の翌年1月1日以降とされており、記事執筆時点では2028年1月1日からの適用が見込まれています。つまり今の時点での取引は、国内業者を使っていても原則として雑所得・総合課税のままです。制度の詳細は施行に向けて変わる可能性があるため、実際の申告にあたっては最新の情報を確認し、税務署や税理士に相談してください。「無登録業者を使うと、将来の税制上の扱いで不利になる可能性がある」という点は、コスト面でも見過ごせない要素です。
現行の総合課税での計算方法を事前に確認しておきたい場合は、仮想通貨の税金を扱った本も参考になります。

この一件から学べること
Bybitの日本撤退は、ひとつの取引所の話にとどまりません。海外の業者と付き合ううえで、どんなリスクを抱えることになるのかを具体的に示した事例として読むことができます。
撤退は利用者の都合とは無関係に決まる
今回、日本居住者の口座は段階的に機能が制限され、最終的には決済と出金だけが残る形になりました。この決定に利用者が関与する余地はありません。ポジションを持ったまま強制決済の日を迎えた方もいたはずです。
期限が設定されると時間との勝負になる
本人確認の期限、close-onlyへの移行日、強制決済の日——サービス終了の過程では、いくつもの期限が設定されました。その時期に忙しかったり、案内を見落としたりすれば、対応が間に合わない事態も起こり得ます。登録したメールアドレスを使っていない、といった小さなことが致命的になります。
分散という考え方
ひとつの取引所にすべての資産を置いていると、その取引所に何かあったときに逃げ場がありません。国内の登録業者を使う場合でも、複数の口座に分ける、長期保有分は自分で管理するウォレットに移す、といった選択肢を検討する価値はあります。
自分で管理するウォレットに移す場合は、リカバリーフレーズを紙に控えたうえで、火災や水害に強い場所に保管する方法もあります。
- 使っている取引所の登録状況を金融庁の一覧で確認する
- 取引所に登録しているメールアドレスが受信できる状態か確かめる
- お知らせの通知設定をオンにしておく
- 取引履歴を定期的にダウンロードして保存する

これから始める方が取るべき選択
暗号資産の取引を始めたいなら、金融庁の登録一覧に掲載された国内の暗号資産交換業者から選ぶのが基本です。「取扱銘柄が少ないのでは」と心配される方もいますが、国内業者も取扱銘柄を増やしており、主要な銘柄はひととおりそろっています。
取引所を選ぶときのチェックポイントを挙げておきます。
- 金融庁の暗号資産交換業者登録一覧に掲載されているか
- 自分が買いたい銘柄を取り扱っているか
- 入出金や送付の手数料はどうか
- 板取引に対応しているか(コストを抑えたい場合)
- アプリや取引ツールが自分に合うか
- ステーキングなどのサービスが必要かどうか
自主規制団体であるJVCEAの会員一覧も、業者を確認するときの手がかりになります。
よくある質問(Q&A)
Q. 日本人でもVPNを使えば利用できる?
A. 居住地の判定を回避する目的でそうした手段を使うことは、利用規約違反にあたる可能性が高く、口座凍結や出金停止のリスクを高めます。取るべき方法ではありません。
Q. 無登録業者を使うと利用者が処罰される?
A. 登録義務は事業者側に課されたもので、利用したこと自体で利用者が処罰されるわけではありません。ただし、日本の法令にもとづく保護の枠組みの外に置かれることになります。
Q. すでに預けている資産はどうなる?
A. 記事執筆時点では出金機能が残されているとされていますが、条件は変更される可能性があります。公式の案内を確認し、早めに対応を進めるのが安全です。
Q. 海外に移住したら使える?
A. その国や地域の法規制に従うことになります。国によって暗号資産の扱いは大きく異なるため、現地のルールを確認してください。
Q. 他の海外取引所なら問題ない?
A. 日本の登録を受けていない業者であれば、基本的な構図は同じです。金融庁は無登録業者に対する警告の内容を公表しているので、業者名を確認してみてください。
Q. 過去に取引した分の確定申告はどうすれば?
A. 日本の居住者であれば、海外業者での取引による所得も申告の対象です。取引履歴を取得できるうちにダウンロードし、損益を集計してください。計算方法に迷う場合は税務署や税理士に相談しましょう。
まとめ
- Bybitは日本の暗号資産交換業者として金融庁の登録を受けていない
- 金融庁は無登録での業務について、これまで3度警告を発出している
- 日本居住者向けの新規口座開設は停止され、既存口座も段階的に機能が制限された
- 記事執筆時点で日本居住者ができるのは、主に変換と出金に限られる
- 無登録業者の利用は違法ではないが、日本の保護の枠組みは及ばない
- 申告分離課税(20.315%)の関連法は成立済みだが、適用は2028年1月からの見込み。対象は国内登録業者経由の取引
- これから始めるなら、金融庁の登録一覧に掲載された国内業者を選ぶのが基本
海外取引所の機能や銘柄数に魅力を感じる気持ちはよくわかります。ただ、規制の枠組みの外にあるということは、うまくいっている間は見えず、問題が起きたときに一気に表面化するタイプのリスクです。Bybitのケースは、それが実際に起きたときに何が起こるのかを示す事例になりました。
制度の中身を理解したうえで、自分の資産をどこに置くかを選んでいきましょう。暗号資産は価格変動が大きく、投資は自己責任です。生活資金ではなく余剰資金の範囲で行い、規制やサービスの最新情報は各社の公式発表と金融庁の公表資料で確認してください。

※記事執筆時点の情報です。規制やサービス内容は変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトおよび金融庁の公表資料でご確認ください。


